所得控除と税額控除

所得控除とは

所得控除とは、一定の条件を満たした場合に、所得額から一定の金額を控除、つまり差引くことができる制度のことです。

所得控除額が大きいほど課税所得(課税対象となる額)が少なくなりますので、その結果、税額も少なくなるのです。

税金は「控除額 × 税率」だけ少なくなります。

 

主な所得控除としては、下記が挙げられます。

基礎控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、障害者控除、医療費控除、
社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、公的年金等控除、寄付金控除

 

税額控除とは

税額控除とは、一定の条件を満たす場合に、税額(課税所得×税率で算出された税額)から、一定の金額を直接差引くことができる制度のことをいいます。

控除額そのままの金額だけ税金が少なくなります。

 

主な税額控除としては、所得税では住宅ローン控除(住宅ローン減税)、法人税では配当控除、外国税額控除が挙げられます。

 

共通点

所得控除も税額控除も、結果的に税金の負担(納税額)を軽減する効果があるという点では共通しています。

 

異なる点

しかし、所得控除が所得から差し引いていくのに対して、税額控除は税額から差し引く控除となる点が異なります。

税金計算の流れを簡単に式で示すと、以下のようになります。

 

「収入金額 - 必要経費など = 所得額」

 

「所得額 - 所得控除額 = 課税所得」
(所得控除の場合、ここで差し引かれます)

 

「課税所得 × 税率 = 税額」

 

「税額 - 税額控除額 = 最終的な税額(納税額)」
(税額控除の場合、ここで差し引かれます)

 

つまり税金計算において、その金額が控除されるタイミングが異なるのです。

 

また、上記の式から最終的な納税額への影響が所得控除では「控除額×税率」なのに対し、税額控除では「控除額そのまま」という点でも異なります。

 

選択可能な場合にどちらを選ぶかはケースバイケース

なお、例えば所得税では、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金及び公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除に代えて税額控除を選択できる場合があります。

この場合、所得控除と税額控除のどちらが有利かが気になるところですが、これは寄付金の額と課税所得の関係によって決まります。つまり、個々の状況によってどちらが有利かは異なりますので、実際に試算してみないと分かりません。
(傾向としては、寄付金の額が少ないと所得控除の方が有利になるケースが多いようです)

 

また、法人税では一定の要件を満たした場合に、普通減価償却額に上乗せして計上できる特別償却と税額控除のいずれかを選択適用できるような制度があります。

この場合も、特別償却と税額控除のどちらが有利かはケースバイケースになります。

特別償却は、初年度は減価償却額が大きくなり、税負担も軽くなります。
しかし、次年度以降の償却額が少なくなることになります。

一方、税額控除の場合、減価償却費は通常通り実施されますので、後に税負担が増えることはありません。したがって、長い目で見ると有利になる場合があります。

 

会社の利益がその期だけ多く計上される場合は特別償却、毎期安定的に利益を計上している場合は特別控除を選択すると効果的な節税ができることが多いといえます。

選択にあたっては、会社の事業予測も一つの要素となりますので、それぞれの場合で将来予測を試算してみることをおすすめします。