固定資産も定期的に棚卸しましょう

固定資産の棚卸は、固定資産そのものが指で数えられる程度の数しかなければ大がかりに行う必要はなく、目視だけでも十分に現物確認ができるでしょう。

しかし、多くの会社にはパソコン等の事務機器が複数あるでしょうし、(リース物件でなければ)車やコピー機等も固定資産に含まれますので、「指で数える程度」を超える数の固定資産はあるかと思います。

 

売りものである在庫(棚卸資産)の棚卸はもちろん重要ですが、固定資産の棚卸を行うことも同様に大事です。

 

「既に現物のないものが固定資産台帳に載っている」というケースが実務でよく見られます。
多いのは、「売却・廃棄したのに、それが台帳に反映されていない」というものです。

固定資産台帳には、その会社が現在保有している資産のすべてが記載されているわけであり、ないものを記載する必要はないのですから、

「余計なものが固定資産台帳に載っている」

ということになります。

また、反対に「現物があるのに、固定資産台帳に載っていない」というケースもあります。
この場合、その現物は「簿外資産」ということになります。

いずれのケースも、捨てた固定資産/事業の用に供した固定資産の記録を、固定資産台帳に反映し忘れたというのが原因と思われますが、固定資産の棚卸を行うことで防止・発見できます。

 

なぜ固定資産の棚卸をした方がよいのか?

「既に現物がないものが固定資産台帳に載っている」というケースでは、既に存在しない固定資産について、その帳簿価額を「除却損」計上することができます。
この固定資産の除却損は、税務上も損金計上できます。
つまり、(金額はその時の帳簿価額によりますが)会社の節税にもつながります。

 

反対に、「現物があって固定資産台帳に載っていないといけないのに載っていない」ケースの場合は、税務調査があった場合に調査官に指摘される可能性が高くなります。
一番多いケースとして、資産計上すべきであったものを経費として一括で落としてしまっていた、というのがあります。
この場合、修正申告等の手続を経て追徴課税されることもあります。

 

また、固定資産の棚卸を行うメリットに、「有姿除却」の可能性も挙げられます。
「有姿除却」とは、たとえ廃棄等をしておらず現物のある固定資産であっても、「固定資産の帳簿価額-売却見込価額(処分見込価額ともいいます)」に相当する金額を除却損として損金の額に算入することができる処理をいいます。
つまり、現物があって、かつ固定資産台帳に反映されていても、下記のいずれかの要件を満たせば除却損を税務上損金に算入できるのです。

(要件)

  1. その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
  2. 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことが、その後の状況等からみて明らかなもの

(※鉄くずのようなスクラップでも価値のあるものは、除却損の金額は「帳簿価額-スクラップ評価額」となるので注意が必要です。)

 

利益が予想より多く出て節税を考えたい時などには、固定資産の棚卸を行って、上記に該当する固定資産がないかどうか確認することも検討されると良いでしょう。

 

固定資産の棚卸は、本来は利益がある・なしに関わらず、会社の資産の現況を把握する意味で重要な業務です。
「その場で目で見てすぐに全てを把握できる」レベルを超える数の固定資産がある場合には、「年に1回」を目標に現物の棚卸を行うことを検討しましょう。
多くの上場会社でも固定資産の棚卸の頻度は年に1回程度ですので、「年に1回」でもできれば十分だと思います。