「節税」にはいくつもの方法があり、数多くの関連書籍やネット情報もあります。
その中からどの方法を実行しようか考える際に確認したいことが、大きく4点あります。
1. その節税方法がどういう性質のものか
「節税」の手法を大きく分けると、
・お金の支出を伴うもの
・お金の支出を伴わないもの
に分けられます。
資金が潤沢で、「とにかく税金を少なくしたい」ということであればどちらの手法でも良いでしょうけど、そうではなくできるだけ資金を会社に残しておきたいという場合には、後者の手法を優先的に採用する必要があります。
したがって節税を行おうとする場合は、まずその手法がお金の支出を伴うものなのか、そうでないものなのかを理解しておく必要があります。
2. 法改正等によって将来節税効果がなくなるリスクもある
現時点では税負担が軽減される効果があるとされている手法でも、将来税法が改正されることによってその効果がなくなる・弱くなる、というケースも多々あります。
節税手法は、税法規定で明確にされていない部分や盲点を突いたものが多いです。
税務当局がそこに目を向ければ、法改正等によって解消される可能性があります。
税法は、毎年大小様々な改正が行われています。
法改正によって、現在の節税策が将来無効になってしまうリスクがありうることにも留意しておく必要があります。
3. 同族会社では法人と個人を一体として考える
同族会社は、「オーナー(株主)=社長」の会社です。
したがって、同族会社では「法人」と「個人」を一体として節税を考える必要があります。
この場合「法人」とは本体の会社だけでなく、別会社がある場合には、それを含むグループ全体のことを指します。
また「個人」とはオーナー社長だけでなく、オーナー社長のご家族を含む個人全体のことを指します。
つまり、「節税」と一口に言っても法人税の節税だけを考えるのではなく、同時に役員個人の所得税や相続税・贈与税の節税対策、さらに自社株対策も考える必要があるということです。
法人の節税対策は、自社株対策や個人の所得税対策、相続税・贈与税対策とも相互に関わっています。
例えば、役員住宅の社宅化のような節税対策では、法人税の節税が期待できるのと同時に、個人の手取りを増やすこともできるため、法人・個人双方の対策になります。自社株対策は、同時に個人の相続税対策にもなります。
ある一つの側面でしか見ていないと、節税をしたつもりでもトータルで見ると節税になっていなかったということもありえます。
例えば、法人税の軽減のために高額の役員報酬を支給しても、それが役員個人の所得税・住民税の負担を増やすことになり、トータルで見るとあまり節税効果がない、というようなケースもありえます。
これまでは、法人なら法人だけ、というようなピンポイントの節税対策がなされることが多かったですが、近年では政策的に個人の税負担が増え、法人の税負担が軽減されていく傾向が見られます。したがって、今後は中小企業の場合は「全体としての節税対策」を検討していくことが重要になると考えられます。
では、何から着手するのがよいでしょうか?
これは、会社の規模やオーナー社長の資産・年齢、後継者が決まっているかどうか等によって異なってきます。
会社の利益が大きくて法人税の負担を重く感じている場合には、法人税の節税が最優先課題になるでしょう。
役員報酬を高額にしていることで個人の所得税・住民税の負担を重く感じている場合には、個人の所得税の節税が最優先課題になります。
社歴が長い会社で事業承継を考え始めている場合には、自社株対策を検討する必要が生じます。
また、オーナー社長の個人名義資産が多く、将来の相続に不安を感じている場合には、相続税対策が優先されるでしょう。
いずれの場合でも、ある一つの側面で考えるのではなく、視点を広く持って総合的に考えることが大切になります。
4. 節税も納税も計画的に行う
上記を踏まえ、計画的な実施が必要です。
そして計画的に行うために、決算前に決算予測・納税予測をするのが望ましいです。
「利益がだいたいどのくらいになって、いくらぐらい納税することになりそうか」
をあらかじめ予測するということです。
月次決算をしっかり行っていない会社では、決算を締めてみると損益が見込と大幅にブレることがあります。
決算を締めた後に利益が出ていることが判明して節税したいと思っても、すでに翌事業年度が進行しているため手遅れです。
また、決算予測をしっかり行っておらず、節税のつもりで支出したことが原因で赤字になれば、資金繰りが苦しくなったり金融機関などの信用を失うことにもなりかねません。
月次決算を毎月しっかり行っている会社は問題ないと思いますが、そうでない会社でも、決算の3か月~1か月前辺りに一度は決算予測・納税予測を行うことをおすすめします。
顧問税理士と決算前に必ず打ち合わせを行い、決算予測・納税予測や対策についての意見交換をすることをおすすめします。