日本では、3月決算の会社が多いです。
ある調べによると、全国の会社の20%以上が3月決算なのだそうです。
上場会社だけで見ると、半数以上が3月決算です。
1年は12か月なので、どの月も約8.3%(≒1/12)となっているのが完全に分散された状態です。
20%以上の月が存在しているということは、それだけ決算のタイミングに偏りがあるということを意味します。
また、3月決算が20%以上もあるということは、逆に言えば、非常に少ない決算月もあるということでもあります。
(ちなみに海外では、12月決算(12月31日が期末日)が圧倒的に多いです)
この決算月ですが、3月である(3月にする)必要性はあるのでしょうか?
結論を先に言いますと、3月決算である必要はありません。
3月決算とするべきルールがあるわけではないので、いつでも問題ありません。
ただし、いつにするかを決めるにあたって検討すべき要素はあります。
会社の状況によって最適な決算月は異なり、一概に「○月がいい」というのはありませんが、決定にあたって考慮した方が良さそうなポイントを4点挙げておきます。
1.会社の繁忙期との兼ね合い
会社は最低でも年に1回決算を行わなければならず、原則として決算日から2ヶ月以内に申告・納税しなければなりません。
よって、決算月から2か月間(=新事業年度の最初の2ヶ月間)は、通常業務に加えて決算業務も行わなければならなくなります。
この期間が会社の繁忙期と重なると相当キツイです。
キツイ時期をまとめることでメリハリがつけられるというメリットも考えられますが、業務も決算も両方とも精度が落ちてしまうというデメリットも考えられます。
決算月を決めるにあたっては、繁忙期との兼ね合いを考慮することは重要だといえます。
2.納税時期との兼ね合い
前述のとおり、会社は原則として決算日から2ヶ月以内に申告・納税しなければなりません。
(「原則として」としているのは、会計監査人の法定監査を受けなければならない等の事情により2ヶ月以内での申告が難しい場合は、「申告期限の延長の特例の申請」を所轄の税務署にすることによって、例外的に1か月延長してもらうことができるからです)
ということは、決算日から2ヶ月以内に納税のための資金を用意しておく必要があります。
それを考えると、資金繰りが芳しくない時期が申告・納税のタイミングと重なるのは回避したいところです。
そして、資金的に余裕ができる時期と納税のタイミングが重なるように決算月を設定するのが賢明でしょう。
3.売上(利益)変動が大きい月との兼ね合い
業種によっては、(季節的要因等により)売上(利益)が際立って多くなる特定の月がある、という会社もあります。
売上(利益)がどのくらいになるのかが予想しやすい業種の場合はともかくとして、そうではなく
「売上(利益)が多くなるのは間違いないけど、どのくらいになるのかはその月になってみないと分からない」
というような場合には、その月を決算月とするのはリスクがあります。
事前の決算予測がしにくく、節税対策をどこまで実行するべきかが見えにくいからです。
売上(利益)がピークになる月(特に年度の決算に大きな影響を与える月)を決算月とするのは回避する方が無難でしょう。
むしろ、その月を期初にする方が、その後の決算予測が立てやすくなり、節税の対策もじっくり検討することができると思います。
4.顧問税理士の忙しさとの兼ね合い
「なんだそれ?」と思われるかもしれませんが、大事です。
決算月が顧問税理士の先生の多忙な時期と重なっていると、顧問税理士の先生も数多くの業務を同時に抱えることになるので、自社の決算に集中してもらうことが難しくなります。
相談にタイムリーに乗ってもらいにくいでしょうし、後回しにされる可能性もあります。
(場合よっては相談してもらえない可能性もあります)
税理士も人間です。忙しくて多くの業務を同時並行で進めている時は、精度も相対的に低くなります。
そのような時期よりも、顧問税理士の先生にしっかり対応してもらえる時期に決算業務を依頼する方が、依頼する会社としても安心できると思います。
以上を踏まえた結果として「3月がベスト」という場合には3月決算でも良いと思いますが、「3月決算にこだわる必要はない」ということだけは知っておいても良いでしょう。
なお、会社設立後に決算月を変更することは可能です。
株式会社の場合は、株主総会で定款変更の決議を行い、定款を変更します。
その後、変更の旨を所轄の税務署に届け出ることになります。
(変更登記は必要ありません)
ただし、「3月→5月」のように、決算月を後ろにずらす場合には、いったん「3月~5月」で2ヶ月の決算を行うことになりますので、変更のタイミングについてはご注意ください(一年以内に決算を行わなければならないからです)。