決算期(決算月)の変更は可能。ただし注意点があります

以前触れましたが、会社設立後に決算期(決算月)を変更することは可能です。

 

会社(法人)の決算月を決める際に考慮したい4つのポイント
日本では、3月決算の会社が多いです。 ある調べによると、全国の会社の20%以上が3月決算なのだそうです。 上場会社だけで見ると、半数以上が3月決算です。 1年は12か月なので、どの月も約8.3%(≒1/12)となっているのが完全に分散された状態です。 20%以上の月が存在しているとい...

 

ただし、決算期を変更する場合には留意しておきたい点があります。
そこで、以下に主な留意点を挙げます。

 

一度だけ1年未満の短期間で決算を行うことになる

決算期を変更する場合、変更しようとするタイミングによって、短期間の決算を行わなければならなくなります。

 

例えば、3月から6月に決算期を変更する場合を例にします。

従来、3月決算だった会社の決算期を6月決算に変更する場合には、変更しようとする直前の期間、つまり4月~6月の3か月間で一度決算を組まなければならなくなります。

時系列で表すと、以下の通りです。

 

X0年4月~X1年3月 → 従来の決算(1年間)

(ここで「これから決算期を変更する!」と決定)

X1年4月~X1年6月 → 決算期変更のために、3か月間で決算

X1年7月~X2年6月 → 決算期変更後の決算(1年間)。

以降、毎年6月末で1年間の決算。

 

短い決算を一度行うのは、税務申告を毎年「1年以内」に行わなければならないという税法上のルールがあるためです。

つまり、決算期変更を行う場合には、経過措置のような形で一度だけ数か月の決算をしなければならないのです(決算日から原則2か月以内に税務申告書を提出しなければならない点は変わりません)。

極端な例ですが、「3月→4月」に決算期を変更する場合には、4月の1か月間だけの決算を一度行うことになります。

 

1年未満の決算を行うことに伴う注意点

次に注意したいのは、決算期変更によって1年未満の決算を行う際には、限度額や判定基準も「1年未満」に置き換える必要が生じる点です。

例えば、交際費の損金算入限度枠は800万円になっていますが、これは「年間」の金額です。
したがって、上記例のように3ヶ月の決算を行う場合には

 

800万円 × 3ヶ月/12ヶ月 = 200万円

 

がその期の限度枠となりますので注意が必要です。

 

減価償却費も同様です。
通常のように償却率を乗じるだけでは年間の減価償却費が算出されるのみです。
これをさらに決算期間(月数)に月割計算しなければ適正な減価償却費が算出されませんのでご注意ください。

 

消費税の判定も同様です。
消費税の計算においては、基準期間における課税売上高が、簡易課税の選択や免税事業者の判定に影響を及ぼします。

この場合、課税売上高が5千万円以下であるか(簡易課税の適用可否)や1千万円以下であるか(免税事業者の判定)は、いずれも「1年当たりの金額」として見ることになっていますので、これも決算期間(月数)に月割計算を行ったうえで判定することになります。

また、地方税の均等割も同様に、通常の均等割額を月割計算することで算出することになります。

 

決算期に偏りが見られる要因

上場企業では多くの会社が3月決算です。
そして外資系企業では、ほとんどの会社が12月決算です。

これは文化的な要因が多分にあるものと思われます。
(日本の場合、政府の会計年度が4月からで、年明けの1月はお正月があるのに対し、欧米ではクリスマス休暇がある代わりに、お正月のような年初行事はない、等々)

 

決算期についてはどの月に設定しても問題はなく、さらに決算日を月末にしなければならないということもありません。
必ずしも「3月31日」や「12月31日」のような月末日を決算日としなくても良いのです。
実際、創業者の方の誕生日が決算日という上場会社もあります。

よって、決算日は好きなように設定することが可能です。
(どのように設定してもメリット・デメリットはありえます)

 

ちなみに、決算日の変更をする場合、非上場の会社であれば特に理由等を決算書への注記等により開示する必要はありませんが、上場会社や大規模企業であれば理由についても注記したりプレスリリースを出す必要が生じます。

決算のタイミングにはメリット・デメリットがありますし、それぞれが自社にあてはまるかどうかもケースバイケースですので、決算日を変更する際は、いろいろな視点・側面から検討されると良いでしょう。